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第2回 理事 安部 和志

日本は今、失われた30年を経て、今後どのように成長を実現すべきかが問われています。かつての成功体験が通用しなくなる中、世界の経済や市場、ビジネスの進め方は変化を続け、グローバル化の進行と共に、国や地域の特色がより強く示される、新たな様相を示しています。

そう言った変化の中、求められるリーダーシップについても、大きな変化を見せています。かつて、国や地域を超えて、ボーダーレスにグローバルなイニシャティブを取れるリーダーが求められていたのに対し、国や地域の個性が際立って示されるようになる中、グローバルとは個性の集まりであると言う新たな前提で、新しいリーダーシップを発揮することが求められていると言えます。

かつて日本は、国を超えて価値が認められる製品や技術力を競争力の源泉として存在感を示して来ました。その競争力が低下する30年の間に、それに代わる新たな競争力を見いだせないまま、日本と言う固有で特異な個性は、ボーダーレスなグローバル化に対しては、チャレンジとも見られていました。しかし、今、世界が多様性を前提としたグローバル化へとシフトする中、日本の個性は、逆に競争力にもなり得ると言えます。日本が持つ特異な個性を競争力の軸として戦略的に組み立て直し、それを明確に示しながら、世界を構成するあらゆる多様性に対する理解と敬意と共に、それらを巻き込む意思とスキルを持つことができれば、多様性から価値創造を実現する、日本らしい、新たなリーダーシップを示すことができると考えます。

そのためには、多様な構成の世界を冷静に眺めつつ、かつての成功体験に固執することなく、過去30年からの学びを踏まえ、この国の特異性をいかに競争力に転換させるか、そしてそれを軸に、いかに多様性を巻き込んで新たな価値創造を実現するか、が鍵となります。

多様性に富む組織は、効率の低下を示す傾向が認められる反面、イノベーション創発の高まりと言う潜在力を持つことが実証されています。JBS-EDOは、自ら深耕を進めると共に、冷静に多様性を理解してその強みを見極めた上で、長期視点で多様性の交錯をリードしながら、多様性からの価値創造を実現できるリーダーを育て、支え、輩出していく基盤となります。多様な人、知識、経験、実践の場を効率的かつ戦略的に体験し吸収できるプログラムを通し、世界で新たに存在感を示しながら、日本の成長をリードする、多くの未来のリーダーが創出されることを願っています。

理事 安部 和志
ソニー株式会社 専務執行役