第5回 理事 小宮山 宏
これからの経済社会を先導するリーダー・幹部人財には、自ら率先垂範して行動することが求められていると思います。現在、世界は転換期にあり変化のスピードが速くなっていますが、日本は残念ながらそのスピードに追い付いておらず、日本の経済社会は世界の中でも特殊な状態となっています。リーダーが常にリーダーであり続けるのではなく、変化に対応して従来フォロワーであった中から新しいリーダーが生まれるような循環を創出することが重要でしょう。日本の良さを活かしながら前に進むためには、場面に応じてリーダーとフォロワーが入れ替わる必要があるのではないでしょうか。リーダー一人の力では難しいと思われることも、フォロワーも含め皆の総力で大きく状況を転換できるのではないかと考えています。
そのような循環を創り出すためには、産業界や教育界はLifelong Active Learningの実践に取り組むことが急務です。ビジネスパーソンを対象とした社会人教育においてはこれまでの座学やケーススタディー教育だけでなく、地方を中心に「現場」に出て学んでいくことが重要です。また、若い時期から現実の社会課題を解決していく学びが必要となっていると強く感じています。社会にとっても、若い人の参加が活力を生みます。若い学生からビジネスパーソンも含め、産業界・教育界を連携させながら地方の現場を体験する機会を創出することが必要です。流れの速い現代においては、産業界と教育界が結びつきを強め、現実の社会課題の解決を通して人財が養成されるという循環が必要なのです。
当機構は、これまでの人財育成の機能を超えて、多様な主体が参画する「現場」を創出させる活動を進めていくべきと考えます。これからの世界は、地球環境を維持し保全することと人々のウェルビーイングを如何に高めるかが価値の源泉となります。そのために、どのような人財を育成するかが我々の取り組むべき重要な役割なのです。例えば、東京にいては見えないバリューチェーンが地方の現場では見えてきます。その課題を発見・認識するために地方に飛び込み、DXなどの新しいテクノロジーを駆使して解決する場を創ることで人を育てることができるでしょう。このような「逆参勤交代」の可能な場を教育機関が提供していくことが必要だと考えています。一例として、日本のエネルギー産業があります。日本は年間に必要なエネルギー約30兆円を輸入に頼っています。これを再生可能エネルギーによって代替すれば、地方で大きなビジネスの創出が可能で、2050年の脱炭素化を達成することができるでしょう。地方に雇用が生まれれば地域の再生も可能です。
そのため、当機構を通して貢献できることは、私が中心となって設立した一般社団法人プラチナ構想ネットワークと協業して地方にビジネスを創出する場を作ることです。プラチナ社会(地球が豊かで持続可能な社会、全ての人を取り残さない自己実現可能な社会)を実現するためには、エネルギーだけでなく、医療・介護のような分野を含めて様々な課題をビジネスを通して解決する仕組みを構築したいと考えています。