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第7回 理事 大澤 真

 日本の経済社会では、オーナーシップを持つ創業家が事業経営をリードしている「ファミリービジネス」が非常に大きなウエイトを占めている(非上場企業の99%、上場企業の約4割)。なかでも地域経済を支えている長寿のファミリービジネスは、短期的な利益、事業拡大や株価の上昇ではなく、社員、顧客、取引先、地域社会など、あらゆるステークホルダーとの長期的信頼関係を最も大切にするという価値観を堅持し、永続的発展(サステナビリティ)を目指して経営を行っている。
 ファミリービジネスのリーダーたちは事業経営に際し、リーダーシップ・オーナーシップ・パートナーシップという創業家に期待される多様な役割を誰がどのように果たすべきか、経営・所有・家族の3つのバランスをどのようにとるべきかという課題に日々直面している。欧米においては、こうしたことを創業家全体で議論し、解決する統治の仕組みを「ファミリーガバナンス」と呼び、そのあるべき姿や実践方法について教育を行うビジネススクールや専門家養成機関も整備されている。一方、コーポレートガバナンスについての議論すら緒に就いたばかりの日本では、ファミリーガバナンスを学ぶ場は極めて限定的である。
 海外ビジネススクールとの広いネットワークを有し、多様な経営経験を有する企業経営者やポリシーメーカーが集うJBS-EDOは、わが国の教育機関への働きかけや自らがエグゼクティブ教育を実践することで、こうしたファミリーガバナンス教育の空白状態を埋めることに大きな貢献ができるのではないだろうか。
 私自身は、日銀での25年間の金融マンとしての経験を経た後、ファミリービジネス支援の仕事を始めて早15年となる。日本ではたくさんの素晴らしいファミリービジネス経営者が事業経営をリードしている一方、後継者問題が最大の課題となっている現実を見続けてきた。JBS-EDOにおいてもこうした経験を活かし、地域経済、日本経済を支えるファミリービジネスの持続的発展に少しでも寄与できれば望外の喜びである。

理事 大澤 真
株式会社フィーモ 代表取締役